今日我々が多く見る事のできる呉昌碩の書は七十歳代から死の年までのものであって、死の年にいたるまでその筆勢はいささかも衰えを見せないばかりか益々盛んな勢いを見せている。呉昌碩自ら篆刻第一・書第二・画第三といったが、晩年十数年の間に書かれた行書、草書は特に素晴らしく、本作品も八十歳の作。暖かく美しく静かで強い書である。樟の木に篆刻されており緑青色の緑墨も美しい。
聯は門や家屋の入り口の両側に対句を書いてかけたもので宋代に次第に普及。明清以後一般に流行した。「書」は本来「彫る」ものであるという事を知らしめてくれ、
現代日本の書家の書のもの足りなさをはっきりさせてくれる。八十四歳で没。
「酒を飲みながら漢書を紐解くと、雲・河が流れるように気持ちは奏時代に入り込む」との大意であろうか。全く同文の書軸聯も知られる。風化・風蝕の姿を露骨に再現した呉昌碩の特徴がよく出ている書。樟は虫がつかない香木として知られる。聯といえば乾隆帝「三希堂」にかかる「懐抱観古今 深心託豪素」が有名。
篆刻を学ぶには奏漢の古印が唯一の目標であることは、書を学ぶ者の常識。
参照 ： ZK-025 |
