定窯。
吐ろ瓶とか太白尊と言われる形。定窯白磁に鉄絵文様のある極めて珍しいもので、大阪市立東洋陶磁美術館蔵重要文化財が同品として知られる(高さは17,3cm)。我国にある定窯白磁に鉄絵文様の品は、かって「定窯白磁黒花文皿」とのたった2つの例しか知られていなかった。
素地は純白に近い粘りのある白磁で、これに透明性牙白色の白磁が薄く掛かっているが、全体的にうっすらと灰色がかった感じがある。釉下胴全面に鉄絵具で牡丹唐草文を描き、これに刻線文を加えてあり、鉄絵具が薄いため文様の部分は淡い飴色。器形・施文技法共に同時代の磁州窯系でも行われたもので、両者の関連性を考えさせる。近時某地墓よりの出土であるが、これ程の優品が出現することに驚愕。入手できる喜びはひとしおである。「宋磁」の格調高く整った静かな気分を感じさせる佳品。重要文化財の方が幾分牡丹唐草文が密に描かれている相違がある。
※太白尊という名称は酒仙といわれた李太白が此形をした酒瓶に倚りかかっている図が良く書かれ、また工芸品に造られているから、何時の頃からかこの形の瓶を太白尊と呼ぶに至ったと言う。 |