CW-050 白磁銹花蓮池魚藻文豆形枕
時代: 北宋時代 、サイズ:高さ 13cm×口径 23cm
価格: \

定窯。
定窯は白磁の名窯として名高く、その製品のほとんどは白磁であるが、ごくまれに鉄泥を膚に塗った黒定や紅定と呼ばれる品がある。それですら極めて珍しいのに、この枕はその鉄泥のスリップを薄く掻き落して白地に銹色の浮文様を表わしたもので稀有の品(安宅コレクションの重要文化財、白磁銹花牡丹唐草文瓶が名品として名高い)。
技法は黒定より少し薄めの鉄泥を膚の全面に塗り、まず錐彫で蓮・魚の輪郭をあらわす。そのあと今度は平鏨で文様を残して余地を薄く掻き落してゆく。文様はわずかな高まりをもって白い地肌の上に浮き上がる。そこで微黄色透明の定窯の白磁釉を全面に被せ焼き上げる。磁州窯の白磁黒掻落しの先駆と考えらている。側面は牡丹唐草文を透かし彫りとする何とも珍しい類例を見ない枕である。
近年までこの手の定窯は井上垣一氏所蔵「蓮花文皿」と安宅コレクションの瓶のたった二つしか我国では知られていないが、花唐草文で同技法の枕が太原の山西大学とアメリカのフィラデルフィア美術館にあり、小山富士夫氏が河出書房 昭和30年刊 「世界陶磁全集10 宋・遼編」と、雄山閣 昭和46年刊「陶器講座6 中国U 宋」 に紹介している。
磁州窯において優れた意匠の枕が日常的使用のために種々製作されたが、魚を巧みに描き細部を線彫りで細かく表す技量・意匠力はすでに定窯で完成されていることがわかる。
近年、開封郊外墓出土(定窯の珍品・優品が数点出土)とわかっており、香港著名収蔵家蔵品で新発表品。宋磁の醍醐味をここに最も端的に味わう事ができるとともに、入手できるこの時代に感謝したい。水を得た魚、魚心有れば水心などと言うが、「魚と水」は切り離せないことのたとえであり、中国語では「魚水情」と言い、男女の関係が緊密であることを示す。
※その後の調査により台湾収蔵家蔵品、海外オークション出品等、3点程定窯銹花枕は見られ、近時の発掘の成果は次々と新資料を提供してくれる。北方の地域では嫁入り道具の中に一対の陶枕を入れることが習慣になっている。








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