右には枝をはる月桂樹、樹下にはヒキガエル(蟾蜍)が、左には衣を翻した天女が「大吉」の札を持ち、下には薬臼を搗く月兔が、鈕下には「水」字が見える。この天女は西王母の不死の薬を盗んで月に逃げて蟾蜍となった嫦娥とも言われ、蟾蜍は月の異称でもある。月にまつわる図柄を集大成した文様。民間の故事が鏡の文様となることは唐も最盛期を過ぎる頃から屡認められるようになる。これに呼応して、鏡背の文様も全てを一方向からのみ見るスタイルのものに変化して行き、文様が絵画表現的なものに変質していく契機を齎すこととなった。
参照 : DK-077
参照本 : 創業120周年記念 中国古鏡展 村上英二コレクション |