三弦鈕を持ち、熊といわれる4頭を細文地模様に装飾する。銅上全面に漆を塗り、凹曲する縁と鈕を囲む帯状部には金箔を、熊(俗にカンガルー)部には銀箔を羽状地には朱彩を施す華麗な鏡。戦国時代の鏡は、中期頃を境にして大きく様相が変化、春秋後期から戦国前半期は主に三晋を中心とする中原地域と、楚を中心とする揚子江中流域とでそれぞれ独自の形式の鏡が出現する。中原では圏帯文鏡とち首文鏡がそれぞれ製作された。文様は青銅器文様と共通するものが多く、そのまま転用したものもある。また鏡面も見事に研磨されていて、鏡として完成された形態をとる。
ただし戦国鏡の遺例は少なく、鏡が広く普及したとは言い難い。本作品のような羽状獣文地鏡は楚国領域で特に流行した鏡と考えられており、漆作品の遺例が多く知られることからその関連性がうかがわれる新資料。漢代に近い頃の作品。貴族が使用したもの。
参照 : DK-052 |