薄板銀を打ち出し、蛤型とした大型盒。女性の化粧用具等を数納めたのであろうかつてみない大型の盒であり合口の上下には花唐草を、片面には細かい魚子地に唐草と鳥と瑞獣を打ち出しで表し、いかにも唐らしい意匠としている。鳥と瑞獣の意匠は内面では相異しているが、鍍金を施すのは同様。
唐代に銀工芸が隆盛を極めたのは食器や装身具だけでなく、小箱・化粧道具をはじめとする身辺の小物にも及んだ。金銀を尊ぶのは伝統的に遊牧民族であり、(漢民族はなにより玉を尊ぶ)古くはスキタイに始まる騎馬民族文化に連なる。したがって、金銀器が都に溢れた唐の時代は漢民族の歴史からみれば特異な時代といえよう。貴族層の豪奢で華やかな文化を示している。
宝鶏近郊 CS-034 と同墓よりの出土品。 |