上面は四葉文を陽刻、筒部は二段に割付けられ、間は交互に単葉を刻し鍍金。3足で支えられる。
上面真中に穴が穿たれ、貫通する孔の有る滴管が嵌まる。所謂スポイド式の水滴であり、筒中にためた水を滴管の頂部を指先で閉じ、吸い上げる形式で葉上にたまる雨露程の水が出る。当時竹筒や木筒に文字を書いた筆の軸は5mmに満たない細さで、小さな穂がつけられていた。文雅の道の道具立てとして、既に美しい文具が造られていたことに驚く。この滴管による吸上げ形態水滴は亀・熊の造形も知られる。漢代人の文具はいずれも楽しい工夫があちこちにあり、意外に細やかな漢人の一面、そしてこれらを愛玩した人の心がしのばれ心の平穏を求める中国人の文房清玩の知恵がある。
宋時代以降は文人の珍玩として戦国、漢時代の青銅や陶磁器の水滴が蒐集の対象とされたという。古き時代を思わせる幽情が土丈夫に好まれたということである。歴史のうねりを、自分の胸に受け止めることは、文物鑑賞の醍醐味と言ってよい。それを製作した工人の息吹が耳元に伝わってくれば、より豊かな精神の膨らみに胸を躍らせることができる。文人にとって古い文房四宝は古きを偲ぶよすがでもある。 |