轅飾とは戦車の車軸と馬を連結する工具先端部の飾り。頭部長方形の穴は轅が抜けないよう固定した部分。龍頭形で全体を金・銀錯。眼には黒瑪瑙が象嵌されている華麗な品。本来は一対である。
車馬具と総称される一群の金具には煌びやかに飾った作が多く早くから鑑賞の対象とされてきた。これらを装着した馬車が行進する際の陽光に照り映える煌きはおそらく眼も眩むものがあったと想像される。春秋戦国時代の戦車馬用の装飾品はたいへん凝っており、貴族たちは金銀の象嵌を多用し互いに競い合った。
春秋時代後半から漢代にかけては青銅器に金銀。緑松石(トルコ石)等を施す事が流行したがこれはそのなかでも際立って見事な作例。類品は戦国・魏時代の品が河南省、輝県固囲村で出土している。墓に実物の馬車を埋める習慣は漢代になっても続けられ、馬車の付属品が残る事となった。
古物の魅力は文物それぞれが生まれた社会を語る「時代の証言者」であるといわれるが、まさにそんな一点といえる。頂上部の穴には角状のものが嵌っていたものと考えられる。
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