景徳鎮窯。
南京赤絵といわれる品。六角入隅の器形をまだ器胎が柔らかい間に凸型を使って型打ち成型した皿。
見込の入隅六角形にはびっしりと蓮池に水禽・白鷺や飛鳥・水草などが細やかに描かれ、周辺部は六区画に分け、窓を設けてその中に海老・亀・蛙・蟹・巻貝などの魚介具類を描き、地紋には青海波・紗綾形・七宝・籠目・亀甲・毘沙門・亀甲などを充填している。色釉の種類も豊富でやや茶色がかった赤に、黄・緑・紫・青・水色などを用い、微妙な色釉の組み合わせと繊細な描法で賑やかで鮮やかな色調の作品に仕上げている。南京赤絵の皿の中でも色絵祥瑞鳳のパターンもあり、色彩的には康煕五彩磁器への展開を予感させる色使いの作品。高台は砂高台。類品の多くは七寸であり、本品は八寸と大きく華麗な図柄が極めて鮮烈で美しく目を射る。
本来「南京赤絵」とは基本的には青花(染付)を用いない白素地上に、色釉だけで彩色を施した作品をさし、実際本図柄の類品は青花を用いない品が殆どであって、本作品のような青花を併用している品は初見。「明末清初」と呼ばれる16世紀末から17世紀末は大きな変革期であり、ヨーロッパ文明の広がりと共に西洋世界と東洋世界の交渉が図られ、本格的な文物の交流が開始。明文化の拡散・普及・定着していった時期で文化史的にも重要な時代である。中国明清文化の日本に及ぼした影響の一つとして、又日本の色絵磁器の成立と展開を考え研究を進める上で、明末清初の陶磁は今後ますます貴重な資料といえよう。
※ 参照 : 書籍参考画像 |